不動産売買仲介の物件状況等報告書(告知書)・付帯設備表テンプレート 事業用・収益物件の記載項目 受変電・消防設備・アスベスト・地下埋設物・テナント Excel無料DL アイキャッチ
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物件状況等報告書(告知書)・付帯設備表 エクセル無料テンプレート|事業用・収益物件の記載項目と記入例【売買仲介向け】

物件状況等報告書(告知書)と付帯設備表の無料Excelテンプレートを記入例つきでダウンロードできます。この2枚は宅建業法35条・37条が交付を義務づける書面ではありませんが、民法572条により「知りながら告げなかった事実」は免責特約があっても免責されません。全日・全宅連の標準書式の実物を確認したうえで、そこに欄が無い受変電設備・消防用設備等・エレベーター・PCB・テナントとの係争・定期借家の別など、一棟ビルや倉庫で必要になる事業用・収益物件の記載項目まで、売買仲介の実務に即して解説します。登録不要でダウンロードできます。

物件状況等報告書告知書付帯設備表テンプレート売買仲介契約不適合責任

この記事の要点

物件状況等報告書(告知書)と付帯設備表は、売買契約書や重要事項説明書ほど話題になりません。宅地建物取引業法35条・37条が交付を義務づける書面にも入っていません。それでも売買仲介の現場では必ず作ります。理由は、2020年4月の民法改正で、売主の責任の基準が「隠れた瑕疵があったかどうか」から「契約の内容に適合しているかどうか」に変わったからです。

基準が「契約の内容」になった以上、契約の内容を決める書面が結果を左右します。何が付いてきて、どこが壊れていて、過去に何があったのか。それを書面にした瞬間、その状態が「契約の内容」になります。書かなければ、買主は「そんな話は聞いていない」と言えます。

もうひとつ、実務で見落とされがちな条文があります。民法572条です。担保責任を負わない旨の特約をしていても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができない、と定めています。免責特約を厚くするほど、告知書の薄さが弱点になります。

そして、一般に公開されている雛形は居住用(土地・建物、区分所有建物)を前提に作られています。一棟ビル・テナントビル・倉庫・工場を扱う事業用・収益の仲介では、受変電設備、消防設備、アスベスト、地下埋設物、賃借人との係争といった、居住用の雛形に欄の無い項目が争点になります。

本記事は、2つの書面の法的な位置づけと役割分担を整理したうえで、事業用・収益物件の項目を追加した物件状況等報告書と付帯設備表のExcelテンプレート(使い方ガイド・報告書・設備表・記入例・根拠と注意の5シート構成)を無料で配布します。

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無料テンプレート

物件状況等報告書(告知書)・付帯設備表テンプレート(Excel・事業用/収益版・記入例つき)

売主に書いてもらう物件状況等報告書(告知書)と付帯設備表の記入用テンプレート。全日・全宅連の標準書式にある住宅向けの項目に加えて、受変電設備(キュービクル)・消防用設備等・エレベーター・PCB含有機器・地下タンク・テナントとの係争・原状回復の取り決め・定期借家か普通借家かの別など、一棟ビルや倉庫で争点になる項目を追加しました。全項目が「有・無・不明」の3択で、不明の理由を書く欄つき。付帯設備表は「設備の有無/引渡しの扱い/故障・不具合」の3列設計です。一棟テナントビルの記入例と、引用した条文の出典一覧も収録しています。

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2つの書面は何のためにあるか|35条・37条書面との違い

まず、法令上の位置づけを条文で確認します。

宅地建物取引業法35条1項は、重要事項として説明すべき事項を1号から14号まで列挙しています。登記された権利の種類と内容、法令に基づく制限、私道負担、飲用水・電気・ガスの供給と排水施設の整備状況、区分所有建物の場合の規約、既存建物の場合の建物状況調査の実施の有無と結果の概要、契約の解除に関する事項などです。この列挙のなかに、物件状況等報告書や付帯設備表はありません。

37条1項も同様です。当事者の氏名、物件の表示、代金の額と支払時期、引渡しの時期、移転登記の申請時期、契約の解除の定め、契約不適合責任の定めなど12項目を列挙していますが、ここにも入っていません。

つまり、この2枚は宅建業法35条・37条が交付を義務づける書面ではありません。では、なぜ全国の仲介会社が必ず作るのか。理由は3つあります。

理由根拠実務上の意味
契約の内容を確定させるため民法562条(契約の内容に適合しない場合の追完請求)書いた状態が「契約の内容」になる。書かなければ買主は不適合を主張できる
免責特約を機能させるため民法572条(知りながら告げなかった事実は免責されない)告知書が薄いと、免責特約を入れても売主が守られない
仲介自身の禁止行為を避けるため宅建業法47条1項1号ニ重要な影響を及ぼす事項を故意に告げない行為は禁止。聞き取りを書面に残す

国土交通省は「積極的に行うことが望ましい」と書いている

義務ではないが作る、という位置づけは、国土交通省のガイドラインにはっきり書かれています。「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には、35条や37条の解釈としてではなく、「その他の留意すべき事項」の章に「4 不動産の売主等による告知書の提出について」という独立した項目が置かれています。

宅地又は建物の過去の履歴や性状など、取引物件の売主や所有者しか分からない事項に関し、売主等から協力を得られるときにおいて告知書を提出してもらい、これを買主等に渡すことについては、建物状況調査の活用と併せて、告知書により買主等への情報提供の充実が図られることで、将来の紛争の防止に役立つなど、宅地又は建物の円滑な流通を促進することが期待されることから、積極的に行うことが望ましい。

同じ箇所には、告知書の記載事項の例も挙げられています。土地関係は境界確定の状況、土壌汚染調査等の状況、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の過去及び現在の利用状況。建物関係は新築時の設計図書等、増改築及び修繕の履歴、石綿の使用の有無の調査の存否、耐震診断の有無、住宅性能評価等の状況、建物の傾き・腐食等。その他として特定保守製品の有無、従前の所有者から引き継いだ資料、新築・増改築等に関わった建設業者などです。

そして、見落とされがちな一文が最後にあります。「売主等の告知書を買主等に渡す際には、当該告知書が売主等の責任の下に作成されたものであることを明らかにすること」。告知書は仲介が調べて作る書面ではなく、売主が自分の責任で作る書面だという整理です。仲介が良かれと思って代筆すると、この前提が崩れます。

民法572条が、この書面のいちばんの理由

条文を引用します。

売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであつても、知りながら告げなかつた事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

事業用・収益物件の売買では、契約不適合責任を免責または大幅に限定する特約を入れることが少なくありません。売主が法人で、現状有姿での引渡しを条件にする取引です。このとき「免責にしたから告知書は簡単でいい」と考えるのは逆で、免責特約があるからこそ、売主が知っていた事実を洩れなく書き出しておく必要があります。書き洩らした事実は、免責特約を突き抜けてきます。

民法566条の1年と、告知書の関係

もうひとつ押さえておきたいのが566条です。買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないと、追完請求・代金減額・損害賠償・解除ができなくなります。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知っていた場合、または重大な過失によって知らなかった場合は、この期間制限は適用されません。

ここでも、売主が「知っていたかどうか」が分岐点になります。告知書は、売主が何を知っていて何を知らなかったのかを、引渡しの前の時点で固定する書面でもあります。

2つの書面の役割分担と、売主に書いてもらうタイミング

物件状況等報告書と付帯設備表は、似ているようで守備範囲が違います。混ぜて考えると、どちらにも書かれない項目が生まれます。

物件状況等報告書(告知書)付帯設備表
何を書くか物件に起きた事象と、周辺の状況何が引渡しに含まれ、それが動くか
時間軸過去から現在(履歴・経緯)引渡し時点(現況と、残す・撤去する)
代表項目雨漏り、シロアリ、給排水の故障、火災、増改築、境界、越境、近隣関係給湯器、空調、照明、厨房設備、受変電設備、消防設備、鍵の本数
揉め方「そんな事故があったとは聞いていない」「エアコンは付いてくると思っていた」「引渡し後すぐ壊れた」
誰が書くか売主本人(仲介が様式を渡し、聞き取りで補助する)売主本人(仲介が現地で照合する)

役割分担を一言でいうと、物件状況等報告書は「何があったか」、付帯設備表は「何が付いてきて、どれが動くか」です。

書いてもらうのは媒介契約の段階が最善

タイミングは、契約直前ではなく媒介契約を結ぶ段階をおすすめします。理由は2つあります。

1つは、告知内容が売り方そのものを変えるからです。雨漏りの履歴、消防設備の是正指導、テナントとの係争。こうした事実は、価格の付け方、買主の選び方、免責特約の設計に直結します。契約直前に出てくると、価格交渉のやり直しか、白紙撤回になります。

2つめは、開示のタイミングが早いほど、その事実が契約の内容に取り込まれるからです。買付を受ける前に開示していれば、買主はその状態を前提に価格を出しています。あとから「聞いていない」と言われる余地が小さくなります。

売主との初回面談で何を聞くかは、第169回の売却ヒアリングシートで整理しています。告知書の下書きは、この面談の場で始めてしまうのが最も効率的です。

標準的な書式に載っている記載項目の全体像

ここは推測ではなく、実際に公開されている書式のPDFを開いて項目を数えました。

公益社団法人 全日本不動産協会の「物件状況等報告書(告知書)(土地・土地建物用)」(2022年5月改訂版)は、次の構成です。

区分記載項目
建物雨漏り/シロアリの害/壁・柱等の腐食、穴、亀裂、汚損/給排水管・排水桝の故障/建物の傾き/増減改築・用途変更/火災(ボヤ等含む)
土地境界について/塀・フェンス・擁壁/越境/地盤の沈下、軟弱等/地中埋設物(浄化槽・井戸・旧建物基礎・建築廃材等)/土壌汚染等に関する情報
環境・近隣電波障害/浸水等の被害/近隣の建築計画/騒音・振動・臭気等/周辺施設/事件・事故等/近隣との申し合わせ事項
建材・資料石綿(アスベスト)使用/新築時資料・住宅性能評価書等/前所有者からの引継資料/プロパンガス業者・浄化槽業者の連絡先

全国宅地建物取引業協会連合会の「付帯設備及び物件状況確認書(告知書)」も、雨漏り/白蟻被害/建物の瑕疵/給排水施設の故障・漏水/建築確認済証と設計図書/住宅性能評価/増改築・修繕・リフォームの履歴/境界確定と越境/土壌汚染の可能性/地盤/敷地内残存物/騒音・振動・臭気/周辺環境に影響を及ぼす施設/近隣の建築計画/電波障害/近隣との申し合わせ/浸水/事件・事故・火災という構成で、区分の考え方はほぼ同じです。

付帯設備表の側は、門塀・植栽・下駄箱・カーテン・冷暖房機・流し台・ガスレンジ・換気扇・湯沸器・風呂釜・洗面台・照明器具・網戸・畳/襖・物置・TVアンテナといった住宅設備が並びます。

見てのとおり、この構成は中古戸建と中古マンションを想定して作られています。宅建業者向けに書式を無料公開しているサイトを見ても、物件状況等報告書も設備表も「土地建物」用の1種類のみで、事業用・収益物件向けの版は用意されていません。

なお、告知書は売主が知っていることを書く書面で、仲介が調べて確認する物件調査とは別の作業です。第172回の重要事項説明書チェックリストと、第164回の物件調査チェックリストとあわせて使うと、売主の記憶と、仲介の調査結果と、重説の記載が三点で揃います。

事業用・収益物件で、標準書式では書ききれない記載項目

ここがこの記事の本題です。前章の2つのPDFを開いて、事業用・収益物件で争点になる項目に欄があるかを1つずつ確認しました。結果は次のとおりです。

項目全日(土地・土地建物用 2022年5月版)全宅連(付帯設備及び物件状況確認書)
受変電設備(キュービクル)欄なし欄なし
消防用設備等欄なし欄なし
エレベーター欄なし欄なし
PCB含有機器欄なし欄なし
賃借人(テナント)との係争欄なし欄なし
原状回復の取り決め欄なし欄なし
定期借家か普通借家かの別欄なし欄なし
石綿(アスベスト)欄あり欄なし
土壌汚染欄あり欄あり
地中埋設物欄あり(浄化槽・井戸・旧建物基礎・建築廃材)欄あり(敷地内残存物)

つまり、性質の違う2種類があります。土壌汚染や埋設物のように欄はあるが粒度が住宅向けのもの。受変電・消防・テナントのように、そもそも聞く設計になっていないもの。分けて対処します。

なお、国土交通省が告知書とインスペクションの活用を検討した資料には、論点のひとつとして「事業者間の取引においては、デューデリジェンスが普及しており『告知書』・インスペクションにあたる情報が提供されているとみられるが、そのような取引についても対象と考えるか」という問いが挙げられています。大規模なデューデリジェンスやエンジニアリングレポートを取る取引なら、そちらが役割を果たします。裏を返せば、それを取らない規模の取引では、告知書が唯一の開示書面になります。

グループ1:建物設備と法定点検

ここは標準書式にまったく欄がない領域です。居住用の設備表は給湯器とエアコンから始まりますが、事業用の建物では、止まると営業が止まる設備と、法律で点検・報告が義務づけられている設備が主役になります。

項目何を書いてもらうかなぜ争点になるか
受変電設備(キュービクル)設置年、直近の年次点検の実施日、更新の予定、絶縁不良の指摘の有無更新費用が数百万円単位。引渡し直後の更新は価格前提を崩す
消防用設備等直近の点検日、消防長・消防署長への報告の有無、是正指導の有無と対応状況消防法17条の3の3により定期の点検と報告が義務。未報告や是正未了は買主に承継される
定期報告(特定建築物)特定行政庁への直近の報告日、指摘事項の有無建築基準法12条の定期報告。指摘が残っていると是正費用が発生する
エレベーター保守契約の形態(フルメンテナンス/POG)、契約先、次回の法定検査契約形態で年間費用が大きく変わる。POGは部品交換が別料金
空調(ビル用マルチ等)設置年、冷媒の種類、故障・更新の履歴更新は高額で、テナントとの費用負担の取り決めが絡む
給排水ポンプ・受水槽更新履歴、清掃の実施状況断水は営業停止に直結する
屋上防水・外壁直近の防水改修・外壁改修の年、保証の残存大規模修繕の要否が投資判断そのものを左右する

消防法17条の3の3は、防火対象物の関係者に対し、消防用設備等について定期に点検させ、その結果を消防長または消防署長に報告することを義務づけています。建築基準法12条は、特定建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)に対し、定期に調査させて特定行政庁に報告することを求めています。どちらも所有者の義務ですから、引渡しとともに買主の義務になります。未報告のまま、あるいは是正指導が残ったまま引き渡すと、買主は引渡し直後に対応を迫られます。

グループ2:環境と法令適合(欄はあるが、粒度が住宅向け)

こちらは欄そのものは存在します。問題は粒度です。たとえば地中埋設物の欄は、想定されているのが浄化槽・井戸・旧建物基礎・建築廃材で、工場や給油所の跡地で問題になる地下タンク・油槽・地下配管は視野に入っていません。石綿は全日の2022年版には欄がありますが、全宅連の書式には欄がなく、PCB含有機器はどちらにもありません。

金額が読めない点も厄介です。「有無」だけでなく「調査したことがあるか」を書いてもらう欄を作ってください。

項目何を書いてもらうか
石綿(アスベスト)含有建材調査の実施の有無と実施日、調査結果、除去・封じ込めの履歴
PCB含有機器変圧器・コンデンサ・安定器の有無、保管・届出の状況、処分の実施状況
地下埋設物旧建物の基礎・杭・浄化槽・地下タンクの残置の有無、把握している位置
土壌汚染過去の土地利用(工場・給油所・クリーニング等)、調査の有無と結果
既存不適格・違反増築の履歴と確認申請の有無、検査済証の有無、用途変更の届出状況
越境・通行隣地との越境、私道の通行掘削承諾書の有無

このうち、検査済証の有無は投資家にとって融資の可否に直結します。売主が「昔のことでわからない」と答えた場合も、わからないという事実をそのまま書いてもらってください。空欄にすると、聞かなかったのか、聞いたが不明だったのかが後から判別できません。

グループ3:賃借人(テナント)に関する事項(欄そのものが無い)

収益物件の売買で最も件数が多いのが、このグループです。レントロールに書ききれない情報を、告知書の側で拾います。

項目何を書いてもらうか根拠・背景
契約の種類各賃貸借契約が普通建物賃貸借か定期建物賃貸借か借地借家法38条。定期借家は事前の書面説明を欠くと更新がない旨の定めが無効になる
造作の帰属賃貸人の同意を得て賃借人が付加した造作の有無借地借家法33条の造作買取請求権。退去時に時価での買取請求を受ける可能性
原状回復の取り決めスケルトン返しか現状返しか、特約の内容退去費用の負担者が変わる
賃料の滞納・分割払い滞納の有無と金額、支払猶予の合意レントロールの契約賃料と実入金の差
係争・クレーム明渡し訴訟、賃料減額請求、近隣・他テナントとのトラブル承継後に買主が当事者になる
フリーレント・段階賃料残存期間、増額の予定表面利回りが実態と乖離する原因
敷金・保証金償却の有無、返還時期、建設協力金の残高承継の金額が決済精算に直結する

賃料・稼働率・契約条件そのものはレントロールで整理します。告知書に書くのは、レントロールの数字が将来どう変わりうるか、という情報です。2つを合わせて初めて、買主は収支を組めます。

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物件状況等報告書(告知書)・付帯設備表テンプレート(Excel・事業用/収益版・記入例つき)

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付帯設備表の書き方|「設備/故障の有無/引渡し」の3列で揉めなくする

付帯設備表のトラブルは、ほぼすべて次の2つに分かれます。1つは「付いてくると思っていた物が無かった」、もう1つは「引渡し後すぐに壊れた」です。この2つは原因が違うので、列を分けて書きます。

配布しているテンプレートは、設備ごとに次の3列を持たせています。

選択肢目的
設備の有無有/無そもそも存在するか
引渡しの扱い引き渡す/売主が撤去する/残置(無償・現状有姿)誰の物になるかを確定させる
故障・不具合無/有(内容を記載)/不明動くかどうかを確定させる

3列にする理由は、「有・無」の2択だと「有るけれど壊れている」「有るけれど置いていくだけで責任は持たない」が表現できないからです。事業用の物件では、前テナントが残した厨房機器や看板、サーバーラック、什器がそのまま残っていることが多く、この扱いを決めないまま引き渡すと、撤去費用の負担で揉めます。

「残置(無償・現状有姿)」は、引き渡すが動作は保証しない、という意味です。売買契約書の側でも、残置物については契約不適合責任を負わない旨を明記しておくと整合が取れます。ただし前章のとおり、民法572条により、売主が知っていた不具合を告げていなかった場合は、この特約があっても責任を免れられません。壊れていることを知っているなら、故障・不具合の列に書くのが結局いちばん安全です。

なお、引渡し当日は、この付帯設備表と物件状況等報告書を持って現地で照合します。第167回の決済・引渡しチェックリストに、当日の進行と照合の手順をまとめています。

無料テンプレートの中身と記入例

配布しているExcelは5シート構成です。会員登録は不要で、そのままダウンロードできます。

シート内容
使い方ガイド2枚の書面の役割、書いてもらうタイミング、スマッチュの紹介と始め方
物件状況等報告書(事業用・収益版)建物・土地・周辺環境の標準項目に加え、設備と法定点検、環境・法令、テナントの3グループを追加。各項目に「有・無・不明」と備考欄
付帯設備表(3列設計)設備の有無/引渡しの扱い/故障・不具合の3列。事業用の設備分類(受変電・消防・昇降機・厨房・看板)を追加
記入例一棟テナントビル(築25年・6テナント入居)を想定した記入済みサンプル
根拠と注意本記事で引用した条文と出典URL、書式を自社用に直すときの注意

記入例は、あえて「不明」と「有(内容を記載)」を多めに入れてあります。きれいに「無」が並んだ告知書は、実際には作れないからです。売主に見本として見せるとき、「ここまで書くものなんですね」と伝わる密度にしてあります。

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物件状況等報告書(告知書)・付帯設備表テンプレート(Excel・事業用/収益版・記入例つき)

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よくあるトラブル6パターンと、売主への進め方

#起きること書面での防ぎ方
1引渡し後に雨漏りが再発。売主は「昔直した」と言うが記録が無い修繕の履歴欄に、時期・施工会社・範囲を書いてもらう。保証書の有無も
2残置された厨房機器の撤去費用で揉める付帯設備表の引渡し列で「残置(無償・現状有姿)」を明示し、契約書と整合させる
3消防の是正指導が残ったまま引渡し。買主が直後に工事消防用設備等の欄に、直近の点検日・報告の有無・是正指導の有無を書いてもらう
4定期借家のつもりが普通借家だった契約種別の欄を賃貸借契約ごとに設ける。書面での事前説明の有無まで確認する
5増築部分に確認申請が無く、融資が付かない増改築の履歴と確認申請・検査済証の有無を書いてもらう
6「聞かれなかったから書かなかった」と売主が主張全項目に「有・無・不明」を置き、空欄を残さない。不明の理由も書いてもらう

売主が「わからない」と言ったとき

事業用物件の売主は、法人であっても担当者が代替わりしていて、10年前の経緯を知らないことがあります。このとき無理に「無」と書かせないでください。「無」と書けば、それは知らないという申告ではなく、無いという申告になります。

配布しているテンプレートは、不明を選んだときに理由を書く欄を設けています。「所有期間中に確認したことがない」「前所有者から資料の引継ぎが無い」と書いてあれば、買主はその部分を自分で調査する判断ができますし、仲介は説明した記録を残せます。

法人売主・相続案件で気をつけること

法人が売主のときは、書いてもらう相手を間違えないことです。総務担当ではなく、建物の維持管理を実際に見ている人(ビル管理の委託先を含む)に確認しないと、点検記録や是正指導の話は出てきません。テンプレートの使い方ガイドに、誰に何を聞くかの一覧を入れてあります。

相続で取得した物件は、被相続人の代の情報が引き継がれていないことがほとんどです。不明が並ぶこと自体は問題ではありません。不明のまま放置して、買主が引渡し後に発見することが問題です。

契約から決済までに揃える書類の全体像は、第165回の必要書類チェックリストにまとめています。物件状況等報告書と付帯設備表は、そのなかで売主本人が書く数少ない書面です。

まとめ|告知書は、買主のためだけの書面ではない

物件状況等報告書と付帯設備表は、宅建業法35条・37条が交付を義務づける書面ではありません。それでも作る理由は、条文を並べると見えてきます。

  • 民法562条:責任の基準は「契約の内容に適合しているか」。だから契約の内容を書面で決める必要がある
  • 民法566条:買主が知った時から1年。ただし売主が知っていた、または重過失で知らなかったときは、この制限がかからない
  • 民法572条:免責特約を入れても、知りながら告げなかった事実は免責されない
  • 宅建業法47条1項1号ニ:重要な影響を及ぼす事項を故意に告げない行為は、仲介業者自身の禁止行為

書けば、その状態が契約の内容になり、売主は守られます。書かなければ、免責特約は突き抜けられ、仲介は説明していない側に立たされます。告知書は買主を守る書面であると同時に、売主と仲介を守る書面です。

そして、事業用・収益物件では、標準書式のままでは書ける欄がありません。受変電設備、消防用設備等、PCB含有機器、テナントの契約種別、原状回復の取り決め。この5つは全日・全宅連のどちらの書式にも欄がありませんでした。まずここだけでも足しておくと、後から効いてきます。

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物件状況等報告書(告知書)・付帯設備表テンプレート(Excel・事業用/収益版・記入例つき)

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著者:中西 潤平(Spira Solutions 代表)

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売主に書いてもらう物件状況等報告書(告知書)と付帯設備表の記入用テンプレート。全日・全宅連の標準書式にある住宅向けの項目に加えて、受変電設備(キュービクル)・消防用設備等・エレベーター・PCB含有機器・地下タンク・テナントとの係争・原状回復の取り決め・定期借家か普通借家かの別など、一棟ビルや倉庫で争点になる項目を追加しました。全項目が「有・無・不明」の3択で、不明の理由を書く欄つき。付帯設備表は「設備の有無/引渡しの扱い/故障・不具合」の3列設計です。一棟テナントビルの記入例と、引用した条文の出典一覧も収録しています。

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