不動産売買仲介の私道の通行掘削承諾書テンプレート 所有者の確認・共有者の承諾・水道とガスの引込・民法改正 Excel無料DL アイキャッチ
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私道の通行掘削承諾書テンプレート無料DL【Excel雛形・記入例つき】|民法改正後も取るべき理由と承継条項の書き方【売買仲介向け】

私道の通行掘削承諾書を、記入例つきのExcelテンプレートで無料配布しています。2023年の民法改正で水道・ガス管を通す権利は明文化されましたが、売買の実務では今も承諾書が求められる場面があります。取得の段取り、承継・承諾料の書き方、重説への載せ方まで売買仲介の順に整理しました。

私道通行掘削承諾書民法改正テンプレート売買仲介契約実務

前面の道路が私道の土地を売るとき、決済の直前になって「ガス管の引込に、私道の所有者の承諾書が要ります」と言われることがあります。所有者の一人が遠方に住んでいる。すでに亡くなっていて、相続の手続きがされていない。承諾の代わりにお金を求められた。どれも、私道に面した物件で起きることです。

2023年4月1日に施行された改正民法で、水道やガスの管を他人の土地に通す権利が条文になりました。それ以来、「もう承諾書はいらない」という説明と、「実務では今も必要」という説明が、どちらも出回っています。

先に結論を書くと、法律上の権利はできましたが、売買の実務では今も承諾書を取っておくのが安全です。ガス会社の約款は私道に導管を埋めるときに所有者等の承諾を求めていますし、拒まれたときに工事を進めるには裁判が必要だからです。

この記事では、承諾書が要る場面の見分け方、私道の持ち方によって誰の承諾が要るか、承諾書に書く項目(とくに次の所有者への承継と承諾料)、重要事項説明と契約書への載せ方を、売買仲介の実務の順に整理します。

記事の最後まで読まなくても使えるよう、通行掘削承諾書の記入用テンプレートと記入例、所有者・共有者の回収管理表、私道の確認リストをExcelにまとめて無料で配布しています。

無料テンプレート

私道の通行掘削承諾書テンプレート(Excel・記入例+所有者の回収管理表つき)

前面の私道について、所有者・共有者から通行と掘削(上下水道・ガス管などの工事)の承諾をもらうための記入用テンプレート。私道の表示・対象地の表示・通行の承諾(徒歩・一般車両・工事車両)・掘削の承諾(設備と工事の種類)・工事の条件・承諾料・承継・協議の8条と添付書類・署名押印欄を配置し、A4縦1枚で印刷できます。共同所有型の私道で建替えに伴う給水管・ガス管の引込を想定した記入例、所有者ごとの持分(登記の分数のまま)と回収の状況を管理し、共同所有型なら回収した持分の合計と過半数に届いたかを自動で表示する回収管理表、承諾書を集める前に確かめる10項目の確認リスト、出典つきの注意点(民法改正との関係・承継・承諾料・本人の署名か)も収録しています。

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承諾書があるかどうかで、決済までの段取りが変わる

私道に面した物件で承諾書が問題になるのは、主に次の場面です。

場面求めてくる相手根拠
ガス管の引込・引替えガス会社託送供給約款(私道に導管を埋めるときは、私道所有者等の承諾が必要)
下水の排水設備の工事自治体の下水道の窓口自治体の運用(回答した1,442団体の63.8%が私道共有者の同意書を求めていた。令和3年11〜12月の国の調査)
水道の引込・増径自治体の水道局自治体の基準(求めるかどうかは自治体で分かれる)
買主の融資金融機関公的な基準は見当たらない。民間の解説では、融資の条件にする金融機関が多いとされる
買主の判断買主車で出入りできるか、将来の建替えで管を引けるか

それぞれの根拠と出典は、このあと順に示します。

承諾書が売買の前にそろっていれば、重要事項説明で「承諾書あり」と説明でき、買主は将来の工事や融資の見通しを立てられます。反対に、契約の後や決済の直前に必要だと分かると、所有者を探して頼む時間が、そのまま決済の遅れになります。

要否が分かった時期起きやすいこと取れる手
査定・媒介契約の前後準備の時間が取れる所有者を調べ、売主から承諾を依頼する
販売中・買付の後買主の融資の手続きと並行になる回収の見通しを買主と金融機関に伝え、決済日を調整する
契約の後・決済の直前工事や融資が止まり、決済が延びる取れない場合の扱いを当事者で決め直す(価格・特約・解除)

分かった時期が遅いほど、選べる手が減ります。私道に面した物件は、査定の段階で私道の登記まで取っておくのが基本です。

決済の当日に何を確かめるかは、こちらで整理しています。

通行掘削承諾書とは──位置指定道路・2項道路・通行地役権との違い

通行掘削承諾書は、私道の所有者が、ある土地(以下「対象地」)の所有者や利用者に対して、その私道を通ることと、水道・下水・ガスなどの管を通すために掘ることを認める書面です。法律で決まった書式はなく、中身は当事者が決めます。

似た言葉が多いので、先に整理します。

名前何を決めるものか根拠土地の所有者が替わったとき
通行掘削承諾書私道を通ること・掘ることへの承諾当事者の合意当然には引き継がれない。承継の条項と取り直しで手当てする
通行地役権他人の土地を、自分の土地のために通る権利民法280条登記をしておけば、第三者にも主張できる(民法177条)
公道に至るための通行権公道に出られない土地の所有者が、囲んでいる土地を通る権利民法210条法律で認められる権利で、土地に伴う
位置指定道路特定行政庁が位置を指定した、建築基準法上の道路建築基準法42条1項5号道路としての指定は残る。通る・掘る権利とは別の話
2項道路(みなし道路)幅4m未満でも、建築基準法上の道路とみなされる道建築基準法42条2項同上。原則として中心線から2mの線が道路の境界とみなされる

ここで押さえたいのは、建築基準法の「道路」に当たるかどうかと、その道を通る・掘る権利があるかどうかは、別の話だということです。建築基準法43条は、建物の敷地が道路に2m以上接していることを求めています(建築基準法・e-Gov法令検索)。位置指定道路や2項道路に接していれば、この条件は満たせます。しかし、それだけで、私道の所有者に対して車で通る権利や、管を通すために掘る権利があることにはなりません。

全日本不動産協会の判例解説も、私道である2項道路は建物を建てるための道路にはなるが、必ずしも自動車で通る権利を認めるものではない、とした最高裁の判断(平成9年12月18日)を紹介しています(私道の自動車通行可否の説明義務・全日本不動産協会)。

承諾書で決められること・決められないこと

決められること決められないこと
通行の範囲(徒歩だけか、一般車両・工事車両も含むか)建築基準法上の道路の種類(指定するのは役所)
掘ってよい設備と工事の種類(新設・引替え・修繕・撤去)2項道路の後退(セットバック)の要否
工事の前の連絡と、工事の後の復旧署名していない、ほかの所有者の意思
承諾料の有無と金額次の所有者を当然に縛ること
私道を譲るときに、承諾を引き継がせる約束登記された権利(地役権など)と同じ効力

隣地との越境を整理する書面は、別にあります。越境が見つかったときは、こちらの記事で整理しています。

無料テンプレート

私道の通行掘削承諾書テンプレート(Excel・記入例+所有者の回収管理表つき)

前面の私道について、所有者・共有者から通行と掘削(上下水道・ガス管などの工事)の承諾をもらうための記入用テンプレート。私道の表示・対象地の表示・通行の承諾(徒歩・一般車両・工事車両)・掘削の承諾(設備と工事の種類)・工事の条件・承諾料・承継・協議の8条と添付書類・署名押印欄を配置し、A4縦1枚で印刷できます。共同所有型の私道で建替えに伴う給水管・ガス管の引込を想定した記入例、所有者ごとの持分(登記の分数のまま)と回収の状況を管理し、共同所有型なら回収した持分の合計と過半数に届いたかを自動で表示する回収管理表、承諾書を集める前に確かめる10項目の確認リスト、出典つきの注意点(民法改正との関係・承継・承諾料・本人の署名か)も収録しています。

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民法改正で、承諾書は不要になったのか

2023年4月1日に施行された改正民法で、213条の2が新しく置かれました。電気・ガス・水道水の供給など、暮らしや事業に欠かせないもの(条文では「継続的給付」)を受けるために、他人の土地に設備を置かなければならないときは、必要な範囲で設備を置ける、という規定です(民法・e-Gov法令検索)。

ただし、無条件ではありません。

条文が求めること中身
必要な範囲であること継続的給付を受けるために必要な範囲に限る
場所と方法他の土地にとって、損害が最も少ないものを選ぶ
事前の通知あらかじめ、目的・場所・方法を、土地の所有者と、その土地を現に使っている人に通知する
償金損害には償金を払う。設備を置いたことで続く損害の償金は、1年ごとに払うこともできる

法務省のサイトで公表されている共有私道のガイドライン(共有私道の保存・管理等に関する事例研究会「所有者不明私道への対応ガイドライン」第2版・令和4年6月)は、通知から工事までに、相手が準備するのに足りる合理的な期間(事案によるが、2週間〜1か月程度)を置く必要がある、としています。また、設備の設置を拒まれた場合も、一般に自力で工事を進めることは禁じられているため、妨害の禁止を求める判決を得ることになる、と説明しています(所有者不明私道への対応ガイドライン 第2版・PDF)。

つまり、法律上の権利はできたものの、相手が反対すれば裁判になり、売買の期限には間に合いません。

なお、213条の2が定めているのは、設備を置くことと使うことです。通行については定めていません。車や人が私道を通れるかは、前の章の通行地役権や通行権の問題として、別に確かめます。

水道・ガス・下水で、承諾の扱いが違う

管の種類によって、承諾書を求められるかどうかが違います。

種類承諾の扱い一次資料で確かめたこと
ガス必要東京ガスネットワークの約款は、私道に導管を埋めるとき、需要家が私道所有者等から、会社の定める様式で承諾を得ることとしている。承諾を拒まれた場合は、ガス工事ができない場合の例に挙がっている
下水私道の持ち方で扱いが違う(相互持合型は下水道法11条で設置を受け入れる義務がある。共同所有型は11条が当たらず、取り決めが無ければ民法の共有の規定による)。多くの自治体が同意書を求める国の調査で、1,442団体のうち920団体(63.8%)が私道共有者の同意書の添付を求めていた。そのうち626団体(68.0%)は「全員」の同意書を求めていた(令和3年11〜12月の調査・令和4年3月とりまとめ)
水道自治体で分かれる神戸市は2023年4月1日の基準の改訂で、民法改正に合わせて「合理的な理由がある場合は通知によることができる」と書き加え、承諾書の様式から土地の使用の承諾の項目を外した。東京都水道局は、私道の場合、担当者から求めがあったときに私道掘削承諾書(任意様式・写しも可)を出すこととしている

出典は、ガスが小売託送供給約款・東京ガスネットワーク(PDF)、下水が共有私道における排水設備の円滑な設置等の促進に関する事例勉強会 とりまとめ・国土交通省(PDF)、水道が給水装置工事施行基準の改訂内容・神戸市(PDF)と第三章 手続・東京都水道局(PDF)です。

下水道については、下水道法が民法の特別な定めに当たるため、民法の改正の後も扱いは基本的に変わらない、と国の勉強会のとりまとめは整理しています。

水道については、ガイドラインが、平成28年の厚生労働省の通知を紹介しています。承諾書が出されないことは、水道事業者が給水の申込みを断る正当な理由には当たらない、という内容です。ただし、実際に承諾書を求めるかどうかは、自治体ごとに違います。

承諾料(ハンコ代)を求められたら

承諾の見返りに、お金を求められることがあります。ガイドラインは、改正前の状況について、私道の所有者等から不当な承諾料を求められることもあるといわれている、と書いています。

改正後について、ガイドラインは、改正民法の設備設置権が成り立つ場合には、設備の設置を承諾することへの承諾料を求められても、応ずる義務はない、としています。払うのは償金で、工事のときに生じた実際の損害と、設備で土地の使用が続けて制限される分の使用料に当たる額です。地下に管を通すだけで地上の利用を妨げない場合は、損害が認められないこともある、とされています。

ただ、ガスのように承諾書がないと工事が進まない場面では、法律の理屈だけでは押し切れないこともあります。払うかどうかは売主・買主と相談して決め、払うなら、金額・支払の時期・どの工事までを対象にするかを承諾書に書きます。承諾料の相場を示した公的な資料は見当たりません。

売買では、今も承諾書を取っておく

理由中身
ガスは承諾が要る約款で、私道所有者等の承諾が求められている
下水・水道は自治体しだい同意書・承諾書を求める自治体がある
拒まれたら裁判自力で工事は進められず、売買の期限に間に合わない
融資公的な基準は見当たらないが、民間の解説では、多くの金融機関が今も融資の条件にしているとされる(私道負担物件の「掘削承諾書」は必要?・LIFULL HOME'S Business)
買主への説明将来の建替え・管の引替えの見通しを、書面で示せる

私道の持ち方で、誰の承諾が要るかが変わる

ガイドラインは、複数の人が持つ私道を、大きく2つの形に分けています。

持ち方形設備を置く・掘るときの考え方
共同所有型私道全体を、複数の人が共有している(1筆を持分で持つ)設備の設置を認めることは共有物の管理に当たり、持分の価格の過半数の同意で決められる
相互持合型私道を複数の筆に分け、それぞれを別の人が持っている共有ではないため、管を通す部分の土地の所有者それぞれが相手になる

これに、私道全体を1人が持っている形(開発した会社や個人が持ち続けている場合など)が加わります。その場合は、その所有者が相手です。

共同所有型では、改正民法の251条・252条で、管理に当たる事項は以前から持分の価格の過半数で決められ、改正で、形や効用の著しい変更を伴わない変更(軽微な変更)も過半数で決められるようになりました。ガイドラインは、一般論として、砂利道をアスファルトで舗装することは、この軽微な変更に当たると考えられる、としています。壊れた部分の補修のような保存行為は、各共有者が単独でできます(民法252条5項)。

所在の分からない共有者がいるときは、裁判所の決定を得て、残りの共有者の持分の過半数で管理の事項を決める制度もあります(民法252条2項)。

ただし、過半数で足りるのは、民法の上での話です。提出先の自治体が全員分の同意書を求めることもあります(前の章の国の調査では、同意書を求める自治体の68.0%が「全員」)。まずは全員から集めることを目指し、集めきれないときに過半数の考え方を使う、という順で進めます。

所有者を調べる

承諾をもらう相手は、登記事項証明書で確かめます。公図で私道の地番を確かめ、その地番の登記事項証明書を取り、所有者・共有者と持分、登記上の住所を書き出します。

登記上の住所が古いままだったり、名義人が亡くなっていて相続登記がされていなかったりすることがあります。その場合は、今の連絡先や相続人を調べるところから始まり、時間がかかります。査定や媒介の段階で私道の登記を取っておくと、この時間を前倒しにできます。

承諾書を集める6ステップ

Noやること確かめる場所・書類
1私道の地番と所有者を洗い出す公図・登記事項証明書
2持ち方(共同所有型・相互持合型)と持分を確かめる登記事項証明書
3道路の種類(位置指定道路・2項道路など)と幅を確かめる役所の建築指導の窓口
4引込の予定と、提出先の様式を確かめるガス会社・水道局・下水道の窓口
5文案を作り、所有者ごとに依頼して回収する承諾書・回収管理表
6重要事項説明・契約書に反映し、写しを買主へ渡す重要事項説明書・売買契約書

1. 私道の地番と所有者を洗い出す

対象地の前面の道が、何筆に分かれ、それぞれ誰の名義かを書き出します。1本の道に見えても、途中で筆が分かれていることがあります。

2. 持ち方と持分を確かめる

共有なら持分を、分筆されていれば筆ごとの所有者を書き出します。配布しているExcelの回収管理表に、共同所有型なら登記の持分を分子と分母のまま入れておくと、回収した持分の合計と、過半数に届いたかが自動で表示されます。

3. 道路の種類と幅を確かめる

位置指定道路か、2項道路か、建築基準法上の道路ではない通路かで、建替えの可否や後退の要否が変わります。役所の窓口で確かめ、2項道路なら、中心線から2mの後退が要るかも確かめます。

4. 引込の予定と、提出先の様式を確かめる

買主が建替えや管の引替えを予定しているか、前面の私道に本管が通っているかを確かめます。ガス会社は承諾書の様式を定めていることがあります(東京ガスネットワークの約款は「当社の定める様式により」承諾を得る、としています)。押印の種類や印鑑証明書の要否も、提出先ごとに確かめます。

5. 文案を作り、所有者ごとに依頼して回収する

承諾書は、所有者ごとに1枚ずつもらうと、回収の状況を管理しやすくなります。依頼のときは、何の工事のために、どの範囲を通り、掘るのかを、公図や位置図を添えて説明します。

依頼するのは売主(工事をするのが買主なら買主)で、仲介会社は書類の用意と日程の調整を手伝う、という形にしておくと、誰が何を約束したかがはっきりします。承諾料などで当事者の主張が対立したときに、仲介会社がどこまで関わってよいかは、越境の覚書の記事で整理しています。

6. 重要事項説明・契約書に反映し、写しを買主へ渡す

回収した承諾書の写しを重要事項説明書の添付資料にし、取れなかった所有者がいれば、その事実を説明します。売買契約書の特約にも、承諾書の有無と範囲を書きます。

承諾書に書く8項目と記入例

No項目書き方のポイント
1私道の表示所在・地番・地目・地積。共有なら承諾者の持分も書く
2対象地の表示通行・掘削の承諾を受ける土地の所在・地番
3通行の範囲徒歩・一般車両・工事車両のどれを認めるかを書き分ける
4掘削の範囲上水道・下水道・ガス・電気・通信のうち対象の設備と、新設・引替え・修繕・撤去のどれを認めるか
5工事の条件着手前の連絡、工事の後の復旧、費用の負担
6承諾料無償か有償か。有償なら金額・支払の時期・対象の範囲
7承継私道を譲るときに承諾を引き継がせること。対象地の承継人にも及ぶこと
8協議書いていないことや、解釈に迷うことは、承諾者と依頼者が話し合って決める

このほか、作成日、承諾者の住所・氏名・押印、公図や位置図などの添付書類も欠かせません。

配布しているExcelの記入例は、4区画が面する共同所有型の私道で、建替えに伴う給水管・ガス管の引込を想定して、各項目を埋めています(社名・所在地・人名はすべて架空です)。

通行の範囲は、車両を書き分ける

「通行を承諾する」とだけ書くと、徒歩だけなのか、車も入れるのかで後から争いになります。車での出入りが前提の物件では、一般車両と工事車両の通行が入っているかを必ず確かめます。建替えでは工事車両が出入りするため、工事車両の通行と一時的な駐車まで書いておくと、工事の段取りが組みやすくなります。

掘削の範囲は、将来の工事まで書く

新設だけを書くと、管の引替えや修繕のたびに承諾を取り直すことになります。東京ガスネットワークの約款も、私道の使用の承諾として、導管を埋めることだけでなく、修繕・維持管理・撤去と、そのための掘削・復旧までを挙げています。引替え・修繕・撤去まで書いておきます。

承継条項の書き方

承諾書は署名した人の約束で、次の所有者を当然には縛りません。そこで、2つの向きで書きます。

替わる人書くこと
承諾する側(私道の所有者)私道や持分を譲るときは、承諾の内容を譲り受ける人に引き継がせる
承諾を受ける側(対象地の所有者)承諾は、対象地の所有者の承継人(買主・相続人など)にも及ぶ

文例です。

承諾者は、本件私道(承諾者の持分を含む)を第三者に譲渡するときは、本承諾書の内容を譲受人に承継させるものとする。本承諾は、対象地の所有者の承継人(買主、相続人その他の承継人を含む)に対しても効力を有するものとする。

ただし、この条項を入れても、私道を買った人が当然に従うとは限りません。私道の所有者が替わったと分かったら、新しい所有者から改めて承諾書をもらう、という運用までをセットにします。

承諾料の書き方

無償なら「無償で承諾する」と書きます。有償なら、金額・支払の時期に加えて、どの工事までを対象にするかを書きます。

依頼者(対象地の所有者)は、本承諾の対価として金○○円を、令和○年○月○日までに承諾者に支払う。承諾者は、本承諾書に定める範囲の通行および掘削について、本対価のほかに金銭を請求しない。

民法改正の章の「承諾料(ハンコ代)を求められたら」で書いたとおり、設備設置権が成り立つ場合、承諾料に応ずる義務はないとされています。払う場合も、後から追加で求められないよう、対象の範囲を書いておくことが大切です。

無料テンプレート

私道の通行掘削承諾書テンプレート(Excel・記入例+所有者の回収管理表つき)

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重要事項説明・契約書・概要書への載せ方と、よくある失敗

宅建業法35条1項3号は、建物の貸借以外の契約(売買など)では、「私道に関する負担に関する事項」を重要事項として説明するよう定めています(宅地建物取引業法・e-Gov法令検索)。

国土交通省の重要事項説明書の様式例(売買・交換)では、この欄は「負担の有無」「負担の内容(面積・負担金)」「備考」でできていて、承諾書の有無を書く専用の欄はありません(重要事項説明書の様式例・国土交通省(PDF))。承諾書の有無と範囲は、備考欄や特約に書きます。

重説と契約書の特約の文例

承諾書がそろっている場合の例です。

本物件の前面私道(○○市○○町○丁目○番○)については、私道所有者全員から令和○年○月○日付「通行掘削承諾書」を取得しており、その写しを本書に添付する。同承諾書は、一般車両および工事車両の通行、ならびに上下水道管・ガス管の新設、引替え、修繕および撤去のための掘削を承諾する内容である。

一部の所有者から取れていない場合の例です。

本物件の前面私道の共有者○名のうち○名(持分合計○分の○)から「通行掘削承諾書」を取得している。残る○名からは取得できておらず、将来の上下水道管・ガス管の工事に際し、別途承諾等の手続が必要となる場合がある。買主はこれを承知のうえで本物件を買い受ける。

取れなかった場合の例です。

本物件の前面私道については、私道所有者からの通行掘削承諾書を取得していない。将来の建替えおよび設備の工事に際し、私道所有者の承諾、または民法第213条の2に基づく通知等の手続が必要となる場合がある。買主はこれを承知のうえで本物件を買い受ける。

売主が宅建業者で、買主が宅建業者でないときは、目的物の種類・品質に関する契約不適合の責任を買主に不利に変える特約が、宅建業法40条で制限されます(業者どうしの取引には当たりません。同法78条2項)。特約の書き方は、専門家に確認してください。

承諾書は、署名が本人のものかまで確かめる

全日本不動産協会が解説している東京高裁の判決(令和5年2月14日)は、承諾書の扱いを考えるうえで外せない事例です。

事実中身
私道2項道路で、所有者4名が「車両の通行を認めない」と取り決めていた
承諾書取り決めを撤回し、一般車両・工事車両の通行を承諾する内容の承諾書が作られた。しかし、所有者の1人の署名は、その子が本人に無断でしたものだった
仲介会社の担当者無断で作られたことを知り、または知り得る立場にあったのに、買主に「取り決めは撤回されていない」ことを説明しなかった
判断承諾書のうち、少なくとも一般車両の通行を認める部分は無効。担当者の説明義務違反を認め、仲介会社に使用者責任による損害賠償を命じた

承諾書を受け取ったら、署名が本人のものか(本人に確かめたか、印鑑証明書と照らしたか)、作られた経緯に不自然な点がないかを確かめ、分かった事実は買主に説明します。なお、判決の原文はこの記事では確かめておらず、内容は協会の解説によります。

よくある失敗6つ

失敗起きること防ぎ方
所有者の一部からしか取っていない提出先に全員分を求められ、工事が止まる回収管理表で、全員分の回収を管理する
亡くなった名義人あてに依頼した承諾書が使えず、相続人から取り直しになる登記の名義と、今の所有者を照らす
通行の範囲に車両が書かれていない車で出入りできるかで争いになる一般車両・工事車両を書き分ける
掘削が「新設」だけ建替え・引替えのたびに取り直しになる引替え・修繕・撤去まで書く
承継の条項がない私道の所有者が替わると、承諾が引き継がれない承継の条項を入れ、所有者が替わったら取り直す
提出先の様式を確かめていない自前の承諾書を受け付けてもらえないガス会社・自治体の様式を先に確かめる

概要書に「私道負担あり」と書いたあと、誰に送るか

承諾書まで整えたら、物件概要書(マイソク)にも、私道の負担と承諾書の有無を書きます。書かずに出して、内見や買付の後に説明するのは、最初の章の表の「分かった時期」を自分で遅らせるのと同じです。

ここで、承諾書そのものより手前の話をします。

スマッチュの運営観測では、業者ネットワークが育った営業担当者の場合、月に300件を超える物件情報が流入してきます。一方で、実際に概要書を作り、顧客に当てられているのは月30〜50件ほど。残りは「見るだけ」で流れていきます。

私道に面した物件は、顧客によって「私道なら見送る」と「承諾書がそろっていれば検討する」に分かれます。全員に同じ資料を送れば、見送る顧客には手間をかけさせ、検討できる顧客には届くのが遅れます。条件付きの物件ほど、送り先の見極めに時間がかかるのです。

スマッチュでは、顧客ごとに「容認_物件状態」として「私道負担あり」「セットバック必要」などを登録できます。登録した顧客は、私道負担のある物件でも、マッチングの判定で減点されない条件として扱われます。「2項道路不可」「幅員4m以上」といった接道の要件も顧客ごとに登録でき、マッチングの照合に使われます。顧客の条件を文章のまま貼り付ければ、AIがこうした記載を読み取って、それぞれの欄に入れます。物件資料をアップロードすると、AIが読み取った内容を確かめて物件概要書を作成し、「マッチング」ボタンで条件の合う顧客を照合して、提案メールの下書きまで用意できます。

無料テンプレート

私道の通行掘削承諾書テンプレート(Excel・記入例+所有者の回収管理表つき)

前面の私道について、所有者・共有者から通行と掘削(上下水道・ガス管などの工事)の承諾をもらうための記入用テンプレート。私道の表示・対象地の表示・通行の承諾(徒歩・一般車両・工事車両)・掘削の承諾(設備と工事の種類)・工事の条件・承諾料・承継・協議の8条と添付書類・署名押印欄を配置し、A4縦1枚で印刷できます。共同所有型の私道で建替えに伴う給水管・ガス管の引込を想定した記入例、所有者ごとの持分(登記の分数のまま)と回収の状況を管理し、共同所有型なら回収した持分の合計と過半数に届いたかを自動で表示する回収管理表、承諾書を集める前に確かめる10項目の確認リスト、出典つきの注意点(民法改正との関係・承継・承諾料・本人の署名か)も収録しています。

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まとめ

2023年の民法改正で、水道やガスの管を他人の土地に通す権利は条文になりました。それでも、ガスの約款、自治体の運用、拒まれたときの裁判の手間を考えると、売買では今も承諾書を取っておくのが安全です。

押さえることは3つです。第一に、建築基準法の「道路」に当たることと、その私道を通る・掘る権利があることは別の話であること。第二に、私道の持ち方(共同所有型・相互持合型)で、誰の承諾が要るかが変わること。第三に、承諾書は署名した人の約束なので、車両の通行、将来の工事、承継、承諾料を書き分け、署名が本人のものかまで確かめることです。

配布しているExcelは6シート構成です。

シート内容
使い方ガイド使う順序、注意点(民法改正との関係・承継・承諾料・本人確認)、出典
通行掘削承諾書(記入用)第1条〜第8条と添付書類・署名押印欄。色の付いたセルに入力して、A4縦1枚で印刷できる
記入例(共同所有型の私道)4区画が面する私道で、建替えに伴う給水管・ガス管の引込を想定(社名・所在地・人名は架空)
所有者・共有者の回収管理表所有者ごとの持分(分子と分母)・依頼日・回収日・済を管理し、未回収の人数と、共同所有型なら回収した持分の合計と過半数に届いたかを自動で表示する
私道の確認リスト10項目を、確かめる場所・見るポイントと一緒に確認する
スマッチュで使う私道負担のある物件を、受け入れられる顧客に絞って届ける方法

自社の書式を見直すときの下敷きとして使ってください。私道に面した物件を、条件の合う顧客に早く届けたいときは、スマッチュも試してみてください。

著者:中西 潤平(Spira Solutions 代表)

無料テンプレート

私道の通行掘削承諾書テンプレート(Excel・記入例+所有者の回収管理表つき)

前面の私道について、所有者・共有者から通行と掘削(上下水道・ガス管などの工事)の承諾をもらうための記入用テンプレート。私道の表示・対象地の表示・通行の承諾(徒歩・一般車両・工事車両)・掘削の承諾(設備と工事の種類)・工事の条件・承諾料・承継・協議の8条と添付書類・署名押印欄を配置し、A4縦1枚で印刷できます。共同所有型の私道で建替えに伴う給水管・ガス管の引込を想定した記入例、所有者ごとの持分(登記の分数のまま)と回収の状況を管理し、共同所有型なら回収した持分の合計と過半数に届いたかを自動で表示する回収管理表、承諾書を集める前に確かめる10項目の確認リスト、出典つきの注意点(民法改正との関係・承継・承諾料・本人の署名か)も収録しています。

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