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不動産「元付け・客付け」完全解説【2026年版】|手数料計算・役割分担・どちらを優先すべきかの戦略

不動産仲介の「元付け」「客付け」の違いを完全解説。手数料の計算・配分方法、専任媒介との関係、どちらの立場を優先すべきかの戦略と、AI活用による効率化まで実務目線で解説します。

元付け客付け不動産仲介手数料媒介契約

「元付けって何ですか?うちは客付けしかしてないですよね?」

新人研修でよく聞かれる質問です。ところが経験年数が上がっても、「なんとなく分かっているが、説明できない」という仲介担当者は少なくありません。

元付け・客付けの理解は、手数料設計・他社との連携・自社の営業戦略に直結します。2026年現在、AIツールを活用した業務効率化が進む中でも、この基本は変わりません。

この記事では、元付け・客付けの定義から手数料計算・実務の判断軸・AI活用まで、実務目線で完全解説します。

元付け・客付けの基本定義と役割分担

まず言葉の定義から整理します。

元付け業者とは(売主側の仲介)

元付け業者とは、売主から媒介契約を受任した仲介会社のことです。

売主が「この物件を売りたい」と仲介会社に依頼したとき、その依頼を受けた会社が元付けになります。元付け業者の主な仕事は以下の通りです。

業務内容
媒介契約の締結売主と媒介契約(専任・専属専任・一般)を結ぶ
物件情報の整理概要書・マイソク・レインズへの登録
買主の募集自社または他社(客付け)経由で買主を探す
価格査定・交渉売主への価格アドバイス・買主との価格交渉補助
重要事項説明の準備売主側の契約書類・調査報告書の整備

元付けは「物件を預かる立場」です。案件が動くまでコストがかかりますが、成約すれば売主から手数料を受け取る権利を持ちます。

客付け業者とは(買主側の仲介)

客付け業者とは、買主を連れてくる仲介会社のことです。

買主が「この条件で物件を探したい」と仲介会社に相談し、その会社が物件を紹介・成約まで導く役割を担います。客付け業者の主な仕事は以下の通りです。

業務内容
買主のヒアリング条件・予算・用途・優先事項の把握
物件の検索・提案レインズ・自社DB・他社情報から条件に合う物件を探す
内見の手配元付け会社に連絡して内見を設定
買主への説明物件の特徴・リスク・資金計画の説明
契約補助買主側の重要事項説明・契約書の確認補助

客付けは「買主を持つ立場」です。案件の選別が自由で、複数の元付け会社の物件を横断して提案できます。成約すれば買主から手数料を受け取る権利を持ちます。

両手仲介・片手仲介との関係

元付け・客付けと混同されやすいのが両手仲介・片手仲介という概念です。

用語意味
片手仲介1つの取引に2社の仲介会社が入り、それぞれが売主・買主から片方ずつ手数料を受け取る形態
両手仲介1つの取引を1社の仲介会社が元付け・客付けの両方を兼ねて、売主・買主の両方から手数料を受け取る形態

片手仲介の場合:元付け会社が売主から、客付け会社が買主から、それぞれ手数料を受け取ります。

両手仲介の場合:1社が売主と買主の両方を担当し、双方から手数料を受け取ります。手数料収入は2倍になりますが、利益相反(売主寄りにも買主寄りにもなれない)のリスクがあると言われます。

手数料の計算方法と配分【具体例付き】

手数料の計算は、元付け・客付けの実務で最も重要な知識の一つです。

片手の場合:元付け・客付けそれぞれの計算式

宅地建物取引業法で定められた仲介手数料の上限は以下の通りです(売買の場合)。

売買価格手数料上限(消費税別)
200万円以下売買価格 × 5%
200万円超〜400万円以下売買価格 × 4% + 2万円
400万円超売買価格 × 3% + 6万円

BtoB売買仲介では400万円を超える取引がほとんどのため、実務では**「売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税10%」**を使います。

計算例:売買価格 1億円の場合

手数料(片手・消費税別)= 1億円 × 3% + 6万円 = 306万円
消費税込 = 306万円 × 1.1 = 336.6万円
  • 元付け業者 → 売主から336.6万円を受け取る
  • 客付け業者 → 買主から336.6万円を受け取る
  • 取引全体の手数料合計 = 673.2万円

両手になる場合の計算

同じ1億円の取引を1社が両手でまとめた場合:

元付けとして売主から 336.6万円
客付けとして買主から 336.6万円
合計 673.2万円

1社が673.2万円を受け取ります。片手の2倍ですが、売主・買主双方の利益を最大化する義務を1社で負うため、利益相反の管理が必要です。

手数料上限と実務の注意点

手数料は上限であり、減額交渉に応じることも法的には問題ありません。実務で押さえておくべき注意点を整理します。

注意点内容
報酬は成功報酬売買成立前に手数料を請求することは原則禁止
買主・売主双方への説明手数料の金額・内訳は契約前に書面で説明義務あり
上限超過は違法上限を超えた手数料請求は宅建業法違反(行政処分対象)
レインズ登録物件専任・専属専任媒介は一定期間内のレインズ登録が義務

国土交通省 宅地建物取引業法の概要(2024年) によれば、手数料に関するトラブルは宅建業者への苦情の中でも上位に入ります。正確な説明が信頼構築の基本です。

元付け vs 客付け:メリット・デメリット比較

元付けと客付けはどちらが有利か、という質問はよく受けます。答えは「自社の戦略次第」ですが、それぞれの特性を理解した上で判断する必要があります。

元付けのメリット・デメリット

メリット:

メリット詳細
案件の主導権を持てる売主と直接契約しているため、物件情報・価格交渉の主導権を持つ
手数料収入が安定しやすい案件さえ受任できれば、自社または他社客付けで成約を目指せる
両手になる可能性がある自社で買主も見つければ、両手手数料を得られる
レインズへの掲載で露出を確保他社の客付けによる成約機会が自動的に広がる

デメリット:

デメリット詳細
売れるまでのコスト発生広告費・調査費・管理の手間が成約前にかかる
売主対応の負担価格変更・条件変更の交渉を売主と繰り返す必要がある
囲い込みリスクの誤解他社客付けを受け入れないと「囲い込み」と見なされるリスク
案件が売れない場合の損失長期間売れない案件を抱えると機会損失が大きくなる

客付けのメリット・デメリット

メリット:

メリット詳細
案件の選別が自由複数の元付け会社から物件を選んで提案できる
広告費がかからない物件の広告・管理は元付け会社が担当
顧客ニーズに集中できる買主側の信頼構築・ヒアリングに専念できる
在庫リスクがない案件を抱えずに動けるため、リスクが小さい

デメリット:

デメリット詳細
元付け会社との関係構築が必要情報を早くもらうために、日頃からのネットワークが重要
物件情報の質に依存元付け会社の物件情報の精度・速度に左右される
手数料は買主との交渉次第買主が値引き要求した場合、手数料を下げざるを得ないことも

どちらを優先すべきか(会社規模・戦略別の判断軸)

不動産流通推進センター 2024年統計 によれば、売買仲介会社の約60%は客付けと元付けの両方を手がけています。ただし戦略的に「どちらに力を入れるか」を決めている会社は少数です。

戦略向いている会社
元付け重視地元ネットワークが強い・特定エリアに強い・売主開拓が得意
客付け重視買主の層が厚い・投資家・法人顧客を多く持つ・AI活用でマッチングが得意
両方バランス規模が大きく、部門で役割分担できる・複数エリアをカバー

スマッチュのようなAIマッチングツールを活用する場合、客付けの効率化(買主ニーズと物件の自動照合)が特に効果を発揮します。物件データを登録しておけば、条件に合う買主候補を自動で出せるため、客付け業務の時間を大幅に短縮できます。

レインズ(REINS)と媒介契約の関係

元付けの実務で避けて通れないのが**レインズ(REINS)**との関係です。

専任・専属専任・一般媒介の違いと登録義務

媒介契約には3種類あり、それぞれレインズへの登録義務が異なります。

媒介契約の種類他社への重複依頼レインズ登録義務登録期限
専属専任媒介不可(自己発見取引も不可)あり締結後5日以内
専任媒介不可(自己発見取引は可)あり締結後7日以内
一般媒介可(複数社に依頼可)なし(任意)なし

元付けの立場として重要なポイント:

  • 専任・専属専任媒介を受任すると、レインズへの登録義務が生じる。登録後、他社の客付けから問い合わせが来る
  • 一般媒介は複数社が同時に元付けとなれるため、競争が発生する
  • レインズ登録後は「物件情報の開示義務」があり、問い合わせに誠実に対応しないと囲い込みとみなされるリスクがある

国土交通省 レインズ制度(2024年) では、囲い込み行為への対応として、元付け業者がレインズ上での「物件の公開・非公開設定」を透明化する仕組みが導入されています。

囲い込みのリスクと注意点

囲い込みとは、元付け業者が自社の客付けで両手仲介を狙い、他社からの問い合わせに対して「すでに申し込みが入っています」などと虚偽の情報を伝えて排除する行為です。

囲い込みのリスク内容
行政処分宅建業法違反として業務停止・免許取消しの対象
売主との信頼毀損売主の損失(早期成約機会の喪失)につながる
業界評判の低下他社仲介会社からの信頼を失い、今後の協業が難しくなる

元付けとして健全に業務を行うには、他社からの問い合わせには誠実に対応し、売主の利益を最優先にする姿勢が不可欠です。

元付け力・客付け力を高める5つの実務ポイント

理論だけでなく、実務で差がつく5つのポイントを整理します。

ポイント1:元付けは「物件情報の品質」で勝負する

他社の客付けから問い合わせが来た時、物件概要書・現地写真・法令情報・周辺データが整備されていると成約率が上がります。情報が薄い物件は「他の物件に行こう」と客付け側に判断されます。

いえらぶコラム 不動産仲介実態調査(2025年) によれば、物件情報の充実度が成約スピードに最も影響する要素として上位に挙げられています。

ポイント2:客付けは「スピード」で差をつける

同じ物件に複数の客付けが問い合わせている場合、先に内見を設定し、先に申し込みを入れた会社が勝ちます。買主ヒアリング→物件提案→内見設定の速度を上げることが客付けの最重要KPIです。

ポイント3:元付けは「他社との関係性」を資産にする

専任媒介を受任した後、客付けをしてくれる他社仲介会社が多いほど成約確率が上がります。日頃から他社への情報共有・報告・感謝の連絡を欠かさない元付け会社は、次の案件でも客付けを集めやすくなります。

ポイント4:客付けは「買主の条件を深堀りする」

「○○エリア・1億円以内」という表面的な条件だけでなく、「なぜ今買うのか・いつまでに決めたいか・何を最も重視するか」を深堀りすると、物件提案の精度が上がります。精度が上がると内見→申し込みの転換率が上がります。

ポイント5:元付け・客付け双方で「情報の鮮度」を管理する

物件の状況(申し込み状況・価格変更・成約)はリアルタイムで変わります。元付けは他社客付けへの情報更新を迅速に行い、客付けは元付けへの最新状況確認を定期的に行う習慣が、無駄な動きを減らします。

元付け・客付けの実務フロー【取引開始から成約まで】

理論の整理が終わったところで、実際の取引がどう進むかを元付け・客付けそれぞれの視点でフローとして確認します。

元付けの実務フロー

① 売主から媒介の相談を受ける
     ↓
② 物件調査・価格査定(レインズ・周辺事例を調査)
     ↓
③ 媒介契約の締結(専属専任・専任・一般を提案)
     ↓
④ 物件情報の整備(概要書・写真・法令調査)
     ↓
⑤ レインズへ登録(専任・専属専任は5〜7日以内)
     ↓
⑥ 自社での買主探し+他社(客付け)への情報提供
     ↓
⑦ 内見の受付・調整
     ↓
⑧ 買主から申し込みが入る → 売主と条件交渉
     ↓
⑨ 売買契約・重要事項説明(売主側担当)
     ↓
⑩ 決済・引渡し → 売主から手数料受領

元付けはステップ③〜⑩まで関与します。売れるまでの期間が長いほど、広告費・管理コストが積み上がります。

客付けの実務フロー

① 買主から物件探しの相談を受ける
     ↓
② 買主のヒアリング(エリア・予算・用途・優先条件)
     ↓
③ 物件を検索(レインズ・自社DB・他社情報)
     ↓
④ 条件に合う物件を絞り込んで提案
     ↓
⑤ 買主が気に入ったら元付けに連絡して内見を設定
     ↓
⑥ 内見同行・物件説明
     ↓
⑦ 買主が申し込みを決断 → 元付けに申し込み書を提出
     ↓
⑧ 売買契約・重要事項説明(買主側担当)
     ↓
⑨ 決済・引渡し → 買主から手数料受領

客付けはステップ①〜⑨まで買主に寄り添います。ステップ③〜④の「物件提案の速度と精度」が成約率を左右します。

元付け・客付けが連携する際のポイント

タイミング元付けの対応客付けの対応
問い合わせ時最新の申し込み状況を即答できるようにしておく「買主の温度感・購入時期」を明確にして問い合わせる
内見設定時日時・注意事項を迅速に連絡内見後の感想を元付けに報告(次の情報提供につながる)
申し込み時売主への条件交渉をスムーズに進める買主に「なぜこの価格か」を丁寧に説明する
契約時瑕疵担保・告知事項を漏れなく整備買主の資金計画・ローン審査の進捗を管理

元付け・客付けの連携がスムーズな取引は、**双方の担当者が「相手の仕事を理解している」**ことから生まれます。

AI・スマッチュを活用した元付け・客付けの効率化

元付け・客付けの実務は、AIツールの導入によって大幅に効率化できます。

元付けでAIが活躍する場面

業務AI活用の内容効果
物件概要書の作成PDFをアップロードするだけで物件情報を自動抽出30分→3分
価格査定の補助周辺成約事例・レインズデータとの比較分析調査時間を50%短縮
売主への報告書作成活動報告の文面を自動生成週次報告の工数を削減
他社への物件情報共有メール文面・概要書セットを一括生成複数社への案内を同時処理

客付けでAIが活躍する場面

業務AI活用の内容効果
買主ニーズと物件のマッチング条件を登録しておけば新着物件と自動照合提案漏れゼロ
提案メールの自動生成物件情報×顧客条件でメール下書きを自動作成1件10分→1分
内見後のフォローメール商談後のフォロー文を自動生成返信率向上
複数物件の比較資料作成候補物件の条件を並べた比較表を自動生成顧客の意思決定を補助

スマッチュでは、物件PDFをアップロードするだけで情報を自動抽出し、登録済みの買主ニーズと自動マッチングします。元付け会社から物件情報を受け取った後、客付けとして「どの顧客に提案するか」を判断する時間が大幅に短縮されます。

AI活用で変わる元付け・客付けの連携スピード

従来の元付け→客付け間の情報伝達はFAX・電話・メールが中心で、物件情報が届くまでにタイムラグが生じていました。AIツールを導入すると:

  1. 元付けがPDFをシステムに登録
  2. 条件が合う客付け担当者のリストが自動で出力
  3. 提案メールが下書き状態で生成
  4. 担当者が確認して送信

元付けから客付けへの情報共有と初回提案まで、最短15分で完結するフローが実現できます。

まとめ:元付け・客付けを理解して仲介業務を設計する

この記事のポイントをまとめます。

項目要点
元付けの定義売主から媒介を受任・物件を預かる立場
客付けの定義買主を連れてくる・買主側の仲介を担う立場
手数料計算売買価格×3%+6万円+消費税(400万円超)
どちらを優先すべきか自社の顧客層・ネットワーク・戦略によって変わる
REINS との関係専任・専属専任媒介は5〜7日以内の登録義務あり
AI活用物件情報抽出・マッチング・提案メール生成を自動化

元付けは「物件を持つ力」、客付けは「買主を持つ力」です。どちらの力も高めることで、取引の機会が広がります。AIツールを使えば、客付けの提案スピードと元付けの情報整備品質を同時に上げられます。

今日から1つだけ変えるとすれば、買主の条件を8項目でヒアリングし、新着物件が入ったら24時間以内に提案するルーティンから始めてみてください。それだけで成約率が変わります。

著者:中西 潤平(スマッチュ代表)